近代競馬は1539年に英国のチェスター競馬場で誕生。ポロ競技などのスポーツ馬術も同国が発祥地です。ブライドルレザーはそんな乗馬の本場にて、馬具用素材として開発されており、約1000年前には存在したとの説もあります。では、どんな馬具に使われるかというと、それは頭絡、手綱、鞭で、このうちの頭絡、手綱にハミを加えたものが馬勒=ブライドル(Bridle)なのです。
ことに手綱は馬に指示を伝える役とともに、騎手が身体のバランスを取るための役も担っていて、したがってこれがちぎれると落馬の危険があることから、他の革以上に堅牢なブライドルレザーが多用されてきました。そうした革が今では鞄や革小物、パンツベルトなどに採用され、多くの人々に好まれて愛されているのです。
2コンパートメントブリーフケース
ブライドルレザーは植物のタンニン(渋)の鞣し剤で鞣されて出来上がるタンニンレザーの一種。ただし鞣された後、手仕事によって牛脂や蜜蝋(ワックス)が擦り込まれているので、すこぶる堅牢で、耐傷性にも優れ、それでいて非常にしなやかなのです。
また、この革で作られた製品には、革の表面に白い粉が吹いたかに見えるものがあります。これはブルームと呼ばれるもので、その正体は、実は革に擦り込まれたワックスが浮き上がったものなのです(ただし個体差などにより、ブルームが浮き出ていない製品も存在します)。ちなみに、このブルーム。乾いた布で拭く、あるいはブラッシングで簡単に落とすことができるので、ご安心を。
ブルームが浮き出た様は、ブライドルレザーならではです。ライトウェイトブリーフケース
牛脂や蜜蝋(ワックス)が表面のみならず、革の内部にもしっかり擦り込まれているブライドルレザーは、そのオイル&ワックスが繊維組織の強度を補完するため、引っ張り強度や耐摩耗性などに優れており、普通の引っ掻き傷なら指先で擦るだけで、そのほとんどを消すことができます。さらにこのオイル&ワックスは撥水効果ももたらしていて、ゆえにブライドルレザーは一般的な革に比べて雨にも強いのです。しかも、より水に強いという点ではフッ素樹脂加工レザーに軍配が上がるものの、革本来の風合いが犠牲になっているというデメリットがあるのに対し、ブライドルレザーは革らしい表情はそのままに、味わいある風合いで私たちを楽しませてくれます。
クラッチバッグ
タフで、雨にも強いブライドルレザーにはもうひとつ、大きな魅力があります。それはエイジング素材だということ。使うほどにしなやかになり、色が深まり、美しい光沢が現われて、未使用時とはまるで異なる表情に変化します。実をいえば、このエイジング効果もタンニンなめしとオイル&ワックスのダブル効果によるもの。しかもグレンロイヤルのフル・ブライドルレザーは透明感ある染料で色づけされているので、堅牢性や撥水性、革本来の表情はそのままに、色&艶の変化が顕著に出ます。薄い色や明るい色だと、そのあまりの“大化けぶり”にビックリしてしまうほど。このエイジング効果に魅せられたブライドルレザー・ファンが少なくないのも納得です。
使う人ごとに違う表情に経年変化。アタリによる濃淡も味わい深い。
使ううちに自然とエイジングするブライドルレザーですが、より美しい表情に“育成”させるなら定期的なお手入れを! 目安は1ヵ月に1回程度。革の折り部分、負荷がかかりやすい部分、コーナーなどは特に念に入りに。これにより、色&艶が美しく深まるのみならず、しなやかになり、かつ耐久性が高まるのです。また「表面が少し乾いてきたかな?」と感じたとき、あるいは雨にさらされた後にも専用ワックスでオイル分を補いましょう。