No.21
二度頂点を極めた靴磨き専門店のオーナーが愛する
品格に満ちたブリーフケース。
「THE WAY THINGS GO」オーナー/シューシャイナー石見 豪さん
ブラシやクリームがきれいに収まるので、
私だけでなく、スタッフ全員で愛用しています。
大阪発の靴磨き店「THE WAY THINGS GO」には靴磨きの日本チャンピオンが二人います。今年優勝した寺島直希さん。そして昨年の王者は、彼の師匠であり、THE WAY THINGS GOのオーナーでもある石見豪さんです。氏のこだわりは靴磨きだけにあらず、オリジナルのブラシやユニフォームの開発、自身のオーダースーツ作りにも一切の余念がありません。そんな石見さんが仕事で愛用しているのが、グレンロイヤルのブリーフケース。その魅力とモノ選びのこだわりについて伺いました。
リペアとケアは切っても切り離せない関係。
━「THE WAY THINGS GO」東京出店の経緯を教えてください。
約2年半前にビスポークテーラー「バタク」の中寺社長がお店に来店されて、後日に「ユニオンワークス」の中川社長を紹介していただきました。極端な話ですが、革靴はケアをしなくても履くことはできますが、もし穴が空いてしまったら必然的にリペアをしなければいけません。そういった理由で、シューシャインを永続的に続けるためには、修理屋さんとタッグを組むべきだと常日頃思っていました。だからこそ、定期的に中川社長の元へ通うようになり、ちょうど知り合ってから1年が経つ頃に、ユニオンワークス銀座店の上にある「The Upper Gallary」の代理運営を私のお店に任せて欲しいと提案してみました。その結果、快諾を頂くことができたので、手始めに靴磨きのイベントを開催しました。
ところが、そのイベントは大盛況でしたが、ストックオーバーになってしまったんです。ストックルームを確保したくても、物件自体が人気のため、いつ空きが出るかもわかりませんでした。それを知った中川社長が、「じゃあ、渋谷店をあげるよ」と言ってくださり、ユニオンワークスさんの1号店をTWTG×UNIONWORKSとして再オープンすることになったんです。そして、靴修理の受け付けを学ぶために、一年かけて私とスタッフ全員が東京と大阪を往復しながらみっちりと研修を受け、ようやく今年の1月にお店をオープンすることができました。ユニオンワークスさんの24年に及ぶ歴史の中で、他社との協業は一度もなかったそうで、非常に光栄です。
「THE WAY THINGS GO」というチームで、さまざまな事業を手掛けたい。
━会社として今後の展望はどのように考えていますか?
東京と大阪半分ずつくらいの割合で活動できたら理想的ですね。今でも、シューシャイン事業以外に、ブラシのブランド「KINKOU」をやっています。また、スタッフのユニフォームとしてビスポークで仕立てたスーツも非常に好評です。ゆくゆくはそういった事業も、もっと本格的に取り組んでいきたいと考えています。
例えば、分社化して今いるメンバーをそれぞれの会社の社長に出来たら理想的だなと思います。今は寺島が優勝したばかりなので、お店の来店数が一気に増加してかなり忙しくしているのですが。「東京で関西風たこ焼きのお店をやりたいと密かに企んでいます」というのが、最近の私のお決まりのジョークです(笑)。一度、スタッフにも振る舞ったのですが、関西の名店よりも美味しいと評判でした。
手間暇を惜しまない、妥協なきモノづくりに惹かれる。
━モノを選ぶ時に大切にしている基準はありますか?
この仕事を始めた時からずっとジャケットを着ていまして、基本的にはジャケットにデニムか、スーツというスタイルで365日過ごしています。2年前くらいから既成品を買わなくなり、今持っているジャケットやスーツはすべてオーダーで仕立てています。どんなアイテムにおいても共通して気にしているのは、ディテールへのこだわりです。
たとえば、今日着ているジャケットも英国の「スタンドイーブン」のコシのある打ち込みの強い生地を使っています。総毛芯仕立てにしたので、見た目も立体的で美しいです。このように、手を抜かず時間をかけて作られたものは好きですね。革製品においても同様で、革自体の質や縫い目の細かさ、持った時に相手が受ける印象を大事に考えています。シンプルなデザインが好きなので、色味はグレーやネイビー、ブラックを選ぶことが多いですね。
シンプルながら、品のある佇まいのプロダクトが多い。
━英国製品の印象を教えてください。
靴磨きの依頼に来られるお客様の中には、一着100万円を超えるビスポークスーツや、ビスポークシューズなど、最高級品を愛用されている方も少なくありません。そういった方々の多くは英国製品が好きで、持ち込まれる革靴のほとんどが英国靴です。
私が愛用しているフォリオケースも「ラザフォード」という英国ブランドのモノで、ピュアイングリッシュブライドルレザーをアイリッシュリネンの糸で縫い上げています。「グレンロイヤル」もそうですが、英国製品はシンプルなデザインでもカジュアル過ぎず、その上で威厳を感じさせてくれるような上品さがあります。そういった理由で、質の高いプロダクトを好む方々に愛されているのではないでしょうか。
お店のスタッフ全員で愛用する、“勝負カバン”
━コレクションの中で、クラシックなブリーフケースを選んだのはなぜですか?
しっかりとマチがあるので、弊社オリジナルのブラシやクリームの瓶がきれいに収まります。ですが、一番の理由はかっこつけられるからかもしれません(笑)。この中から職人がケア用品を取り出したら、かっこいいと思いませんか? 以前は出張靴磨きをやっていた時代に特注で作った「グローブトロッター」の道具箱を使っていたのですが、壊れてしまった上にそこまで大げさなカバンである必要性を感じなくなりました。
ですので、それは大阪店で展示して、今は「グレンロイヤル」のブリーフケースを愛用しています。1週間連続のイベントなんかでは難しいですが、1~2日の出張イベントであれば必要な道具をすべてこのカバンに詰めて持っていっています。うちのスタッフが出張へ行く際にも持たせているので、今やスタッフ全員にとっての“勝負カバン”としての役割を担っています。どれだけの大荷物を入れても、ベルトが付いているので中身がしっかり収まってサマになるんです。
傷が味になり、さらにかっこよく見える革。
━メンテナンスはどのようにされていますか?
このブリーフケースもよく見ると結構傷が付いているのですが、ブライドルレザーはそれすらも味として、長く愛用しているような雰囲気に収めてくれます。ガシガシ使っても汚くは見えず、むしろかっこよく見えるところは魅力だと思いますよ。普通のカーフと比べても経年変化による味の出方が上品ですよね。きれいに使いたい方もいると思いますが、個人的にはあまり気にせずに使った上で、経年変化を楽しむ方が好きです。
メンテナンスに関しても頻繁にする必要はなく、乾いてきたなと思ったらクリームを塗って、ブラッシングをして空拭きする程度で良いと思います。クリームにこだわるのであれば蝋分の多いブライドルレザー専用クリーム、革靴と合わせてケアするのであればアニリンカーフクリームがオススメです。指で広げて円を描くように塗り込むと、蝋が浮き上がって買い立ての時のような艶が出てきます。ベタつくので、最後にちゃんと空拭きしてあげるのが大事ですね。
photoTRYOUT textK-suke Matsuda
「THE WAY THINGS GO」オーナー/シューシャイナー
石見 豪さん
1982年生まれ。勤めていた会社を退社した後、靴磨き業に傾倒。路上から靴磨きをスタートし、修行を積んだ後、2012年に出張靴磨きのサービスを開始。
2015年、大阪市の船場ビルディングに靴磨き専門店「THE WAY THINGS GO(ザ ウェイ シングス ゴー)」をオープン。2018年一月、銀座三越店で開催された「靴磨き日本選手権大会」にて優勝する。2019年一月に、東京初となる店舗を渋谷に出店。
https://www.twtgshoeshine.com
photoTRYOUT textK-suke Matsuda