GLENROYAL of Scotland

       

No.42

信頼を付与する“勝負カバン”。
編集者を支えるダレスバッグ

編集者 / 「ヤマモトカンパニー」代表山本 晃弘さん

ダレスバッグは信頼の後押しになるだけではなく、
「相応しい人になれ」と、鼓舞してくれます。

2008年に創刊した『AERA STYLE MAGAZINE』の創刊編集長であり、 “スーツおじさん”として、長年スーツスタイルの啓蒙を続けている山本晃弘さん。2019年には、後進に道を譲り、同誌の編集長を退任。現在は、自身の会社「ヤマモトカンパニー」を立ち上げ、数々のファッションメディアで編集や執筆、企業やブランドの販促および制作支援などを手がけられています。独立以来、これまで以上に信頼の大切さを感じたという山本さん。「相応しい自分であるか?」という自戒を込めて、グレンロイヤルのダレスバッグを手にされたそうです。今回は、お仕事のお話と合わせて、その魅力を語っていただきました。

“リアル”を読者に伝える、山本流ジャーナリズム。

━最近のお仕事について教えてください。

2019年に独立して以来、さらに仕事の領域が広くなりました。『AERA STYLE MAGAZINE』では、いまもエグゼクティブエディターとしていくつかの企画を編集したり、時計の特集などではがっつり執筆を担当したり。『AERA STYLE MAGAZINE』WEBの編集長も兼任しています。自分で創刊した思い入れのあるメディアですので、軸足は置き続けています。そのほかの仕事としては、広告やコンテンツの制作、ウェビナーやYouTubeチャンネルへの出演、メディアへの寄稿などのお仕事をいただく機会が多いです。案件や媒体に関わらず、私が常々意識しているのは、読者のリアル。たとえば、ビジネスウェアを着る時にどうありたいか、良い歳を取るためにどのようなライフスタイルを送りたいか、というような視点です。その上で、ファッションをビジネスマナーで語る、腕時計を家族愛で語るなど、読者の心に響く切り口を考えています。企業さんのブランディング支援をお手伝いする際も同様に、そのブランドのどこに魅力があるか、どのように打ち出したら魅力的に映るか、思考を巡らせます。30年以上ファッションの仕事に携わっていますが、そういう編集者としての本質的な部分はずっと変わりません。


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スペシャリティを追求し、長く仕事を続けていくための滑走路。

━「ヤマモトカンパニー」として、今後の展望はどのようにお考えでしょうか?

独立した時に、多くの方から「何をやるのか?」と尋ねられました。たしかに、“スーツおじさん”としてスーツの啓蒙活動に注力したり、編集プロダクションとしてコンテンツ制作に取り組むなど、様々な選択肢がありますし、嬉しいことにたくさんのオファーもいただいています。ですが、「まだ分からない」というのが正直な答えです。ある時に娘から言われ、自分が仕事を進めていくためのキーフレーズにしているのは、「人に感謝されることと、自分がやりたいことを選んだ方がいい」ということ。そのために60歳を待たずして独立しましたので、この3〜4年は自分のスペシャリティを見つける旅路であり、長く仕事を続けていくための滑走路でもあると考えています。いっぽうで、紙の雑誌やスーツの着こなしといった、先輩たちから教えてもらったものを次の世代に引き継いでいく役割を果たしたいとも思います。幸いにも、気持ちがわくわくするようなお仕事をいただく機会も増えました。たとえば、今年の春にサントリーウエルネスさんが創刊した『グッドエイジング』という会報誌では、編集長を任せていただいています。長年メンズ雑誌に携わってきたので、ある程度ターゲット層を絞っている媒体が多かったのですが、この冊子は女性も男性も含むかなり幅広い年齢の読者層に向けて、市販雑誌ではありえないような大部数を発行しています。そういう面でも、長い編集者人生の中の新たなチャレンジとして、非常にやりがいを感じています。


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着こなしのルールは、常に進化していくもの。

━ここ数年で世の中は大きく変わりましたが、ライフスタイルに変化はありましたか?

スーツおじさんを標榜しているのに、あまりスーツを着なくなりました(笑)。一人でデスクワークをする日が増え、カジュアルなセットアップスーツや、カットソーを着て仕事をすることも多くなりました。ビジネスウェアは自分のために着るというよりも、コミュニケーションツールのひとつですから、シチュエーションがなければ着る機会も減ってしまいますよね。ただ、2008年に『AERA STYLE MAGAZINE』を創刊して以来、毎日スーツを着ていましたので、じつはサーフィンが好きということや、普段はTシャツ、短パン、キャップ姿のおじさんということは知られていなかったんです。だから、最近は海ではなくて山へ行くようになったのですが、全身アウトドアウェアの姿をSNSなどにアップすると周りの方々からビックリされます。ビジネスウェアにしろ、ファッションにしろ、着こなしのルールにしろ、常に進化していくものだと思っています。仕事もそうですが、人はいつでも変わることができるはずです。自分の変化を必要とされたり、それを誰かと共有することができるのは楽しいですよね。


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「相応しい人になれ」と、自分を鼓舞してくれるモノ。

━モノ選びの際に、どのような視点を大切にされていますか?

「スーツを着たら、背筋はしゃんと伸ばせ」。これは私に洋服を教えてくれた父の言葉です。洋服や鞄、革靴が自分のライフスタイルに沿ってエイジングしていくのも素敵なことですが、その逆もあると思うんです。たとえば、スーツに相応しい人になれるかどうか。背筋を伸ばすというのは姿勢の話でもありますが、きちんと相手の顔に眼を向けて、本当のことを言えるかどうかということ。そんな風に、「モノに相応しい自分になる」のもエイジングのもう一つのあり方だと思います。本日身につけている〈ドレイクス〉のネクタイもそう思わせてくれるモノの一つです。スーツおじさんとして、ブルーのソリッドタイやレジメンタルタイを愛用してきましたし、静かに個性を語る“アンダーステートメント”が良いと考えていましたので、プリントのタイはほとんど着用してきませんでした。ですが、本当の自分自身はそういう厳格な人間かと言われたら、そうでもあるけどそうでもない。もっと臨機応変で、チャーミングで、気持ちのいい存在でありたいと思った時に、このフリーハンドのようなプリントのネクタイを購入しました。こちらも、自分自身と着こなしルールが変化した例かもしれません。


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信頼を付与し、背筋を伸ばしてくれるダレスバッグ。

━ダレスバッグを購入されたきっかけを教えてください。

グレンロイヤルのダレスバッグは、3年ほど前に「ブリティッシュメイド 青山本店」で購入しました。ダレスバッグは和製英語で、ほかにもロイヤーズバッグやドクターズバッグという呼び方がありますし、子どもの頃、よく診察に来てくれていたお医者様が持っていたのも印象に残っています。購入を決めたのはちょうど独立前、これからさらに信頼感のある仕事をしなければいけないと感じていた時期だったと思います。最近はリモートワークが増えていますが、大事にしているクライアントさんに大きな提案をする際など、大切な勝負時にはこのバッグに大切な資料を入れて持つようにしています。先ほどのエイジングの話と同様に、ダレスバッグは信頼の後押しになるだけではなく、「相応しい人になれ」と、鼓舞してくれるのも魅力ですからね。機能面も申し分なくて、中の荷室が分かれているので荷物の視認性が高く、非常に取り出しやすいです。取材道具、コンテ、見積もり、展示会でいただいた冊子、自分が編集した雑誌のバックナンバーや制作した広告が掲載された新聞、読みかけの本など、普段から荷物が多いので、収納力があって重宝しています。その割に一般的なダレスバッグよりも軽いですし、コンパクトで使い勝手が良いです。革製品のメンテナンスは自分ではせず、信頼できるお店にお願いすることが多いです。タフなブライドルレザーでしっかりと作られたこのバッグ、これからさらにエイジングを楽しみたいと思っています。


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脈々と受け継がれていく、技術とプライド。

━グレンロイヤルなど、英国ブランドの魅力とは何だと思われますか?

以前、仕事でスコットランドのあるファクトリーを取材した時にクラフトマンシップについて考えさせられました。英国のモノづくりを語る際に、必ずクラフトマンシップの話になりますが、それ自体はイタリアにも、アメリカにも、ここ日本にもありますよね。それぞれ共通する部分もありますが、少しずつ意味合いが違うと私は思います。取材で訪れたそのファクトリーで職人の方に「モノづくりで一番大事にしていることは何ですか?」と尋ねると、彼は「みなさんの期待に応えられるものを作り続けること」と言った後、すぐに「違う」と訂正しました。それから放った言葉を聞き、スコットランドのクラフトマンシップの真髄に触れたような感覚になりました。彼が言ったのは、「ここにいる弟子が、自分と同じ年齢になった時、自分以上に良いモノを作れるようになること」。英国の職人には、ワーキングクラスに帰属していることのプライドがあります。たとえば、モノづくりに従事する方は、その親や子ども、親戚なども含めて、誇りを持って仕事に取り組んでいるケースが多いです。だからこそ、過去から現在、そして未来へと、連綿と続く確固たるモノづくりが受け継がれていくわけです。40年以上の歴史を持つグレンロイヤルも、まさにそんなクラフトマンシップを持つブランドの一つなのではないでしょうか。


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編集者 / 「ヤマモトカンパニー」代表 山本 晃弘さん

photoKenichiro Higa textK-suke Matsuda(RECKLESS)

編集者 / 「ヤマモトカンパニー」代表
山本 晃弘さん

編集者 / 「ヤマモトカンパニー」代表 山本 晃弘さん

1963年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、ファッションエディターとしてのキャリアをスタート。『MEN’S CLUB』、『GQ JAPAN』などを経て、2008年に朝日新聞出版の設立に参画。同年11月には、『AERA STYLE MAGAZINE』を立ち上げる。2019年に編集長を退任し、自身の会社「ヤマモトカンパニー」を設立。現在は、同誌のエグゼクティブエディターおよび、WEBの編集長を務めながら、広告・コンテンツ制作、媒体への出演や寄稿、ウェビナー講演、企業やブランドのブランディング支援などを手がける。ビジネスマンや就活生に向けた「スーツの着こなし」アドバイザーなど、媒体を問わず幅広く活躍。著書に、『仕事ができる人は、小さめスーツを着ている。』。

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