自社メディア編集長が考察する
老舗百貨店でグレンロイヤルを扱う理由。
「ISETAN MEN’S net」編集長田代 径大さん
日本人はエイジングや修理して長く使うことが好き。
だから、ブライドルレザーにたどり着くのは必然なんです。
2013年に「伊勢丹新宿店メンズ館」の公式メディアとして誕生した「ISETAN MEN’S net」。館とお客様との距離を縮めるために、2015年に大幅なリニューアルを実施し、現在では、取り扱う商品の情報だけではなく、モノの背景などを伝える大きな役割を果たしています。わずか4人のスタッフで構成された編集部を指揮しているのは、編集長である田代径大さん。メディアの役割とメンズ館における「グレンロイヤル」の印象をお聞きしました。
自称編集長として、親しみの持てるメディア作りに邁進
━編集長としてどのようなお仕事をされていますか?
じつは、編集長というのは正式に任せられたわけではなく自分で名乗ることにしたんです(笑)。私がメンズ館のメディア担当に就任する以前は、「ISETAN MEN’S net」の実態と言いますか、誰が運営しているのかが見えない状態だったんですね。だからこそ、編集長という肩書きで自分が前に出て行くことで、より分かりやすく、親しみの持てる媒体にしたいという想いがありました。ファシリテーターとして、洋服のデザイナーさんと対談をさせて頂くような機会も沢山ありますが、実際には私がこうした方が良いとあれこれ決めているわけではなく、チームのみんなで企画を考えて運営しています。
私も元々は店頭で販売をしたり、アシスタントとしてバイイングをしていましたが、何か魅力的なものを企画したり、完成したものをどう告知して、どうしたらお客様に興味を持って頂けるかを考えるのが好きでした。作成した記事に対しての反響を、売り場を通じてダイレクトに感じられるというのは恵まれたことだと思っています。メンズ館自体、ファッションのアミューズメントパークみたいなものじゃないですか? これまでは紳士靴の売り場だけを担当していましたが、今では見る領域が全館に広がりましたので、やり甲斐もあり楽しいです。
館の魅力を発信し、お客さまに届けるのが使命。
━「ISETAN MEN’S net」の役割を教えてください。
そもそもの役割は、「タイムリーかつデイリーにお客様に情報をお届けする」ということでした。ところが、できた当初は2人で運営をしていたらしく、記事を作る量や時間に限界がありました。それをもっと迅速かつたくさん伝えるためにリニューアルし、現在の編集部が発足しました。「ISETAN MEN’S net」はオウンドメディアですので、広告収入などに頼るメディアとは収益構造が違います。最終的には、お店のファンになっていただくことが目標のため、お客様の立場になり親しみやすいようなコンテンツを作るというのを意識しています。嬉しいことに手応えもあり、先日は記事を読んだ方がわざわざ大阪から来てくださり、50万円のスーツを購入して頂きました。また、「ミナミシャツ」というブランドのオーダー会を開催した時も、約半数の方が「ISETAN MEN’S net」を読んで来てくださったんです。それはやはり、シャツ工房に編集部のメンバーが訪ねて、その場で見たことや感じたことを記事にしたことでお客様に伝わったのだと思っています。実際、「ミナミシャツ」は日本橋の旗艦店へ行けばオーダーできるのですが、わざわざメンズ館でオーダーしてくださったというのは非常に嬉しかったですね。
支持されているのは、英国ブランドの持つ安心感。
━「伊勢丹新宿店メンズ館」のお客様は、英国製品にどのような印象を持たれていますか?
メンズ館では、イタリアブランドが好きな方、イギリスブランドが好きな方、といったように、お客様の趣味趣向が明確に分かれています。とりわけイギリスブランド好きには、お医者様であったり、企業の社長様であったりエグゼクティブな方が多い印象です。役職に見合った格好をしなければいけない方にとって、“本物のクオリティ”という意味で、英国製品はなくてはならないものですね。とくに革小物においては、ブライドルレザーを使用したものが非常に人気です。おそらく日本人のDNAに、使い込んで経年変化をさせたり、修理して長く愛用するという文化が根付いているのでしょうね。そういうジャンルで調べていくと、結果的にブライドルレザーにたどり着くのは自然なことだと思います。初めは表面にブルームが出ていて、使い込んでいくことで変化していくこともそうですが、日本人にとって好きな要素が満載ですよね。
シンブルなデザインの財布と、クラシックな雰囲気のレザートート。
━グレンロイヤルの製品で気になるモデルはありますか?
昔からコンパクトな財布が好きなので、マネークリップ付きの財布に惹かれます。財布にはあまり余計なものを入れたくないですし、支払いの時にスッと紙幣を取り出せるのは楽ですよね。あとは、スモールパースに紙幣やカードをすべて詰め込んで、つぶして使うというのも良いですね。ブライドルレザーは丈夫な上にそこまで厚みがないので、あえてクシャッとつぶして使うと良い表情が出るんですよね。店頭では取り扱っていないのですが、シンプルなレザートートバッグも気になります。一枚革でライニングのないバッグって、最近はなかなか見かけなくなりましたよね。
クラフトマンシップと遊び心の二面性。
━田代さんにとって、英国製品の魅力とは何でしょうか?
最近はなかなか行く機会がないのですが、英語を学ぶために1ヶ月ほど滞在していたり、入社してから3年連続でイギリスへ行っていました。「オックスファム」というチャリティショップが好きで、10年くらい前に革の財布とシルバー製のシューホーンを購入しました。産業大国なので、こういった革や銀の製品のように質実剛健なものが強いのにも関わらず、「スマイソン」のトランプのように遊び心があるものを作っているところが面白いですよね。この本は、「ノーザンプトンミュージアム」で見つけたのですが、シューホーンだけの本なんて誰が読むんでしょうね(笑)。どことなく産業のにおいを出しつつ、新しいことや面白いことにも挑戦する。そういう二面性が英国製品の魅力なのかもしれません。
photoTRYOUT textK-suke Matsuda
「ISETAN MEN’S net」編集長
田代 径大さん
1985年生まれ。大学を卒業後、「株式会社三越伊勢丹」に入社。紳士靴の販売からキャリアをスタートし、高級靴のエリア責任者、商品の買い付けや企画など、さまざまな経験を経て、2017年10月に「伊勢丹新宿店メンズ館」のメディア担当に就任。「ISETAN MEN’S net」の編集長として、自社メディアやSNSなどを活用したコミュニケーション戦略に携わる。
https://www.imn.jp
photoTRYOUT textK-suke Matsuda