No.23
沖縄と東京を拠点に生活するデザイナーの理想を叶えた、
最適解のメガネケース。
デザイナー/Luft所属真喜志 奈美さん
メガネとサングラスの2本が入る理想的なサイズ。
むしろ、私のメガネサイズまでも変えてしまいました。
デザイン事務所Luftにおいて、空間デザイナーとして活躍する以外に、プロダクトデザインを手がけたり、D&DEPARTMENT OKINAWAのプロデューサーとしても活動する真喜志さん。東京と沖縄の二拠点を往来し、移動の多い生活を送る彼女ですが、そのカバンの中にはいつもグレンロイヤルのメガネケースが入っていると言います。今回はお仕事の話やモノ選びの視点と合わせて、その魅力を語っていただきました。
プロジェクトの一つひとつが、新たな仕事に繋がっていく。
━現在の仕事について教えてください。
家具と空間のデザインを主に手掛けています。時にプロダクトデザインの仕事をすることもありますが、割合としては9:1くらい。基礎からプロダクトデザインの勉強をしているわけではないので、「こうあるべき」というセオリーを知らないんです。そういう意味では、既存のプロダクトにないデザインを好む方からの依頼が多いかもしれません。空間にしてもプロダクトにしても、私の仕事を見てくださった方からお仕事を頂き、また新たなプロジェクトに携われるのは嬉しいですね。私がプロデューサーを務めるD&DEPARTMENT OKINAWAも、そんな縁でスタートしたものの一つです。OKINAWA STANDARDという建築プロジェクトに取り組んでいた時に、その模型を見たナガオカケンメイさん(D&DEPARTMENT PROJECT代表取締役会長)が東京の事務所に来てくださったんです。そこに私がデザインした「ラワンシェルブズ」という家具のプロトタイプがあり、D&DEPARTMENTのお店で取り扱っていただくことになりました。それからお付き合いが始まり、D&DEPARTMENT OKINAWAの設立にいたりました。
人とのコミュニケーションを通じて、最適解のデザインを考える。
━仕事をする際のポリシーを教えてください。
企業そのものというよりも、担当の方との出会いや関係性を大切にしています。小規模な体制でやっていますので、個人のデザイナーさんやカフェや飲食店のオーナーさんからの依頼も多いんです。その方が私のことを信じてくれて、一緒に何かを作っていくというスタイルの仕事が増えてきているので、これまで以上にその方の雰囲気や私に望んでいることを考えるようになりました。お互いを認め合いながら仕事をするとうまくいくことが多いんですよね。
一番長くお付き合いをしているクライアントは「ヨーガンレール」さんですが、ヨーガンさんが亡くなってからは彼のパートナーとして長年活動されていた方と密にコミュニケーションを取りながら仕事をしています。昔は担当の方からのご要望にうまく折り合いをつけることが難しかったのですが、最近はそれがきっかけになってプロジェクトごとに新たな挑戦ができることに喜びを感じています。デザインに関しては、状況を整理して物事の本質が見えるよう削ぎ落としていくこと、そして「やり過ぎない」ということをモットーにしています。その上で、担当の方のご要望を生かしてより良いものが完成するように取り組んでいます。
二都市で暮らすことで、気持ちに余裕が生まれる。
━東京と沖縄の二拠点で生活することの魅力を教えてください。
本当は沖縄が3で東京が1くらいの割合にしたいのですが、今はまだ半々といった感じです。最終的に沖縄で仕事をしたいとは以前から思っていて、4年前から徐々に沖縄での仕事を増やしています。東京をメインに活動をしていた時に仕事が立て込んできて、「今の体制のままでは一つひとつの仕事にきちんと向き合うことが難しい」と感じてきた時、自分自身が動きづらくなるのが嫌で考えを変えたんです。ベルリンやソウルにわりと長いこと暮らしていたこともあって、都市に捉われずプロジェクトごとに自分が動きながらやるスタイルが性に合っているみたいです。
それからは、いわゆる事務所というものは構えず、東京でも沖縄でも、自宅兼事務所のかたちで生活しています。沖縄に帰っても結局のところ仕事ばかりしているのですが、流れる時間の速さが違うこともあり、少し力を抜く術が身についた気がします。最近では東京にいても良い意味で力を抜くことができるようになりました(笑)。昔は仕事のことで頭がいっぱいでしたが、打ち合わせを早めに終えて友人たちと飲みに行けるほど気持ちに余裕を持つことができるようになったのは月の半分を沖縄で暮らしているおかげかもしれません。
機能美があり、長くつき合えるものが好き
━モノを選ぶ際にどんなことを大切にしていますか?
月並みですが、飽きないもの。特別なものではなくても、長く愛せるものを選ぶようにしています。高校生くらいの頃から、ずっと同じような服装で同じような髪型にしているので、友人たちからも「本当に変わらないね」と言われます。現代美術が好きなので、おそらく刺激をそこにしか求めていないのかもしれません(笑)。だからこそ、何かモノを選ぶ時はあくまでニュートラルなものを選びます。デザインが華美ではなく、生活に必要な機能があって、年月を経ても美しいもの、自分がプロダクトのデザインをする時にもそういう想いはあって、たとえば、木村硝子店さんとご一緒したこのグラスは、よく食堂で使われているグラスを、ガラスという素材の美しさがそのまま表れるよう再構成してデザインしました。水を飲むグラスとして日常に使ってもらえるよう「ウォーターグラス」という名前をつけていますが、ビールやワインなど、自由に使っていただけたら嬉しいです。
メガネのサイズまでも変えた、理想的なケース。
━グレンロイヤルのメガネケースを選んだ理由を教えてください。
2年前にBRITISH MADE青山店で手に入れました。それまではメガネを購入した時に付いてくるケースを使っていたのですが、移動が多いこともあり、打ち合わせの度に何度も出したりしまったりを繰り返していると、1年余りで壊れてしまうことが多かったんです。しかも、私はいつもメガネとサングラスの2本を持ち歩くので、かさ張らないようにわざわざ小さいフレームのメガネを選んで無理やりケースに2本入れていたんです(笑)。
だから、このメガネケースと出会った時は感動しました。まずは革質が本当に良いなと。2年間かなり乱暴に使っていますが、丈夫なのでまったく壊れていません。本当にタフで、10年も20年も使えるという安心感があります。それに、なによりもサイズが最高です。正式な使い方ではないのかもしれませんが、メガネとサングラスの2本を重ねて入れてもこのケースならきちんと収まります。おかげさまで、大きいフレームのメガネに変えることができました(笑)。
英国らしさを感じさせるミニマルで美しいデザイン。
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グレンロイヤルの製品は質実剛健な作りを貫いているにも関わらず、洗練されている印象があると感じました。いつも小物は黒を選ぶことが多いのですが、より英国らしいスマートさを感じたネイビーを選んでみました。無駄のないスタンダードなデザインながら、伝統を感じさせるブライドルレザーの質感やディテールをとても気に入っています。素材の選択と、形状、製法とが、理に叶っていて、それがさり気ないこと。何かが突出するのではなく、それらの調和が、英国らしい品性を醸し出しているのだと思います。
photoTRYOUT textK-suke Matsuda
デザイナー/Luft所属
真喜志 奈美さん
1966年、沖縄県生まれ。武蔵野美術大学 工芸工業デザイン科を卒業後、ベルリン国立芸術大学大学院 彫刻科での学生生活、ソウルでのデザイン事務所勤務を経て、1999年にソウルでデザイン事務所を設立。
2003年に帰国した後、ヨーガンレール、 starnet / tokyo、minä perhonen / materiaali || eläväなど、数々の空間デザインを手がける。プロダクトデザインの仕事として、ENVELOPEシリーズ、LAUAN SHELVES、典型プロジェクト、木村硝子店 Water Glassなど。D&DEPARTMENT OKINAWAのプロデューサーとして、沖縄の生産者との共同開発にも取り組んでいる。
photoTRYOUT textK-suke Matsuda