No.30
ファッションエディターが出会った、
スタイルを選ばないレザートート。
ファッションエディター小曽根 広光さん
クラシックなスーツに合うカバンを探していた時に一目惚れ。
想像を超えるほど、どんなスタイルにも合うので驚いています。
メンズファッション誌の編集者を経て独立。キャリアのスタートからドレスクロージングにどっぷりと傾倒し、その知識の深さに定評のあるファッションエディター・小曽根広光さん。13年に及ぶ編集者歴の中で、イギリスやスコットランドはもちろん、イタリアや香港などの国を度々訪れ、さまざまなブランドのモノづくりの現場を見てきたそうです。そんな小曽根さんが、数年前に出会ったグレンロイヤルのトートバッグを愛用している理由とは? モノ選びのこだわりやライフスタイルのお話に加え、その魅力について伺いました。
ドレスクロージングを軸に、ライフスタイルに枝葉を広げる。
━現在のお仕事について教えてください。
新卒で世界文化社に入社して、配属希望通りに『MEN’S EX』の編集としてキャリアをスタートすることができました。僕は洋服の担当を任されていましたので、主にスーツや革靴をはじめとしたドレスクロージングのページを編集していました。その仕事の一環として、イタリアで年2回開催されるメンズファッションブランドの展示会「ピッティウォモ」へ行ったり、コートや革靴の取材でイギリスやスコットランドを訪れたこともあります。幸いその後も異動にならなかったので、同編集部で12年ほど働き、2018年の8月1日にフリーランスとして独立しました。現在は主に雑誌をメインに活動しておりまして、『MEN’S EX』、『THE RAKE JAPAN』、『MEN’S Precious』、『MEN’S CLUB』などの媒体で編集をしたり、ブランドさんのカタログやコンテンツなどの制作にも携わっています。最近ではファッション誌が、洋服だけでなくライフスタイルまで幅を広げていることもあり、先日初めてお酒にまつわる企画を担当させて頂きました。正直、詳しい方ではなかったのですが、初心に戻ったような新鮮な気持ちで挑むことができたやり甲斐のある仕事でした。今後は、洋服と他のカルチャーを掛け合わせることで仕事の可能性を広げていきたいと思っています。
いつもとは違う、特別な雰囲気を身にまとう喜び
━ドレスクロージングに興味を持ち始めた原体験を教えてください。
小学校5年生くらいの頃に、姉の結婚式がありました。その際に、両親から初めてスーツを買ってもらったんです。今思えばブリティッシュなテイストのデザインで、グレーのフランネル生地のジャケットとベスト、半ズボンという組み合わせでした。そのスーツに蝶ネクタイを合わせて、まるで「名探偵コナン」のようなスタイルで式に臨みました(笑)。ただ、その格好をしたときに、いつもの洋服を着た時とは違う特別感を得ることができたことは、今でもよく覚えています。それを機にドレスクロージングというものに興味を持ち始めました。大学の入学式の際にも、両親が記念に銀座のデパートでスーツを買ってくれたのですが、その時は自分でも色々なブランドのものを比較してみました。そのおかげか、「ふむふむ、SUPER100’sという糸があるのか」と、また別の角度から興味を持つようになりました。そうは言っても、毎日スーツで大学へ行っていたわけではなくて、大学時代には「コム・デ・ギャルソン」が好きで、よく青山にあるお店へ買い物に行っていました。今でもクライアント様との打ち合わせや取材の時には基本的にスーツを着ていますが、それ以外の時にはカジュアルな格好をしています
ベーシックなデザインかつ、高品質で経年変化を楽しめるモノ。
━モノを選ぶ際に大切にしている条件はありますか?
基本的にはクオリティが高く、ベーシックなデザインのモノが好きです。その中でも、トレンドとの適切な距離感があるものを選ぶことが多いです。たとえば、伝統的なブランドでありながら時代性を取り入れている「ドレイクス」のネクタイ。ブランドの運営が、マーク・チョーさんとマイケル・ヒルさんに世代交代してからは、気づけば欲しいネクタイが「ドレイクス」ばかりになっていました。柄も良いですし、端の巻きも綺麗ですからね。僕は好きになるとそればかり買ってしまう癖があって、オーダーしたモノを含めてこれだけの本数になってしまいました(笑)。
あと、使い込んだ時にかっこ良くなるというのも大切な基準の一つです。この「グレンフェル」のコートは、10年ほど前に「ヴァルカナイズ・ロンドン」で購入しました。クリーニングをしておらず、ヨレヨレでライニングも擦り切れているのですが、品質が高いからこそ良い経年変化が出ていて、とても気に入っています。僕自身スタイルとしてはイタリアが好きなのですが、スーツの生地やアウター、ニット、革靴などに関しては、質の高い英国のモノを好んで買うことが多いかもしれません。
スーツに合わせやすく、ブライドルレザーのエイジングも楽しい。
━グレンロイヤルというブランドの印象を教えてください。
『MEN’S EX』編集部で働くようになった直後くらいに、「ディセンタージュ」(現ブリティッシュメイド)というお店で初めてベルトを購入しました。こってりとしたレザーブランドがたくさんある中で、グレンロイヤルには洗練された上品なデザインのプロダクトが多く、スーツにも合わせやすいという印象を持ちました。あとは、編集部の先輩にグレンロイヤルの財布を愛用している方がいて、財布を見せてもらったことをよく覚えています。革製品は使っていると表面が剥がれてみすぼらしくなってくることがあるのですが、その財布はいつもパンツのポケットに入れられていて端が潰れているのにも関わらず、ブライドルレザーの特性もあり革自体がピカピカに輝いていたんですよね。「こんな革があるのか」と、当時はかなり驚きました。グレンロイヤルとの出会いを機に、ブライドルレザーを好きになったというのは過言ではないかもしれません。味の出方が楽しいですし、タフなので気を使わず自然体で使うことができるというのも魅力ですよね。
スーツだけでなく、どんなスタイルとも相性の良いトートバッグ。
━トートバッグを選んだ理由を教えてください。
2年ほど前に、オーダーで仕立てたスーツに合うカバンがなかなか見つからなくて悩んでいました。ブリーフケースだと少し固すぎますし、クラッチバッグだと荷物があまり入らないので、形はトートバッグが良いと思っていたのですが、イタリアブランドのシボ革のモノだとどうしてもクラシックなスーツとは合わず……。そんな時に出会ったのが、このトートバッグです。グレンロイヤルのコレクションの中でも何種類か型があったのですが、縦長のデザインの方がよりドレス感がありサイズ的にもちょうど良い容量でしたので、このモデルを選びました。もともとスーツだけでなく、カジュアルな格好にも合いそうだなと思っていたのですが、想像以上にどんなスタイルにも合うのには驚きました。見た目はシンプルですが、エッジがきちんと処理されていて美しいスクエア型になっているので、スーツやジャケットと相性が良いです。それでいてブライドルレザーならではの重厚さと存在感があり、ジーンズなどにも合わせることができます。ハンドルも肩に掛けられるわりには絶妙な長さに設計されているので、手で持っても地面に擦ることはありませんし、自立するのでとても便利です。本当にあらゆるシーンとあらゆるスタイルに合う万能なカバンだと思います。
ベーシックなデザインゆえに、本当の意味で長く愛用できる。
━普段は、バッグの中にどんな荷物を入れていますか?
フリーランスになり、あまりオンオフがなくなってしまったので、いつでも仕事ができる体制にしています。最近では、仕事道具として紙を使わなくなってしまったので、基本的にはMacbookとiPadで仕事をしています。あとは、カメラやiCレコーダー、ファイルや名刺入れを持ち歩いています。このトートバッグは中の構造がシンプルなので、ポーチや、配線を入れるガジェットケースなどを活用して小分けにしています。僕は普段から荷物が多い上に、あまりメンテナンスをしない方で、どちらかと言えば何も考えずにガンガン使って味を出すのが好きなこともあり、一度あまりに重い荷物を入れ過ぎてしまって底のステッチが切れてしまったことがあります。その際に、「ブリティッシュメイド 青山店」に持ち込んだら、驚くほど綺麗に直してもらえました。複雑なデザインや繊細な素材を使用しているモノだと修理ができないこともありますが、ベーシックなデザインだからこそ修理の再現性も高いのだと思います。グレンロイヤルのモノづくりの技術と、このトートバッグが本当に長く愛用できるということを実感した瞬間でしたね。
photo Kenichiro Higa textK-suke Matsuda(RECKLESS)
ファッションエディター
小曽根 広光さん
1984年生まれ。大学を卒業後、世界文化社に入社。『MEN’S EX』編集部に配属となり、スーツや革靴などの担当となる。12年勤めた後、2018年にフリーランスのファッションエディターとして独立。ドレスクロージングを専門分野として、さまざまな雑誌やWEBメディア、ブランドの販促物などで、編集と執筆を行う。最近の趣味は、国内旅行とギター。愛用楽器は「ギブソン」のES-275。
photo Kenichiro Higa textK-suke Matsuda(RECKLESS)