No.46
ファッションディレクターの心を掴んだ、
オーガナイザーウォレット
ファッションディレクター/メンズバイヤー福島“ティアモ”雄介さん
財布でありながら、パスポートを収納することもできます。
マチがしっかり取ってあるので、僕はスマートフォンまで収納しています。
ナノ・ユニバースのメンズバイヤーの傍ら、YouTubeチャンネル「Tiamo La moda」の司会進行を務め、メンズファッションの魅力を伝え続けてきた福島“ティアモ”雄介さん。2021年の3月に満を辞してフリーランスとして独立し、現在は特定のお店やブランドに縛られず、縦横無尽にコラボレーションを行う新時代のバイヤースタイルを貫かれています。英国ブランドとの親和性も高く、歴史あるメーカーとの別注企画を数多く経験。また、グレンロイヤルの製品も昔から使ってくださっているそうです。今回は、お仕事やモノ選びのお話を伺いながら、昨今愛用されているというオーガナイザーウォレットの魅力について語っていただきました。
縛りに捉われることなく、面白い洋服を追求していきたい。
━最近のお仕事について教えてください。
今年の3月に、お世話になっていたナノ・ユニバースとの契約を終了し、新たにフリーランスとして活動をスタートしました。これまでも会社に基盤を置きながら、百貨店さんやブランドさんとのコラボを行ってきましたが、セレクトショップのバイヤーとしての縛りがあるのがジレンマでした。だからこそ、今後はもっと自由に動くことができるのが楽しみです。僕を支持してくださっているファンの方々はコアな洋服好きが多いので、きっと本当に好きなモノ、いいと思うモノを作らなければ反応してくれないと思うんです。だからこそ、常にフラットな立場でいることを意識していきたいです。このシーズンにここの場所に行けば、ティアモがバイイングや企画をした商品が買える。それがお店にとって、ブランドにとって、またお客さまにとっても価値になるという軸をぶらさずに、今後も自分のスタイルを貫いていきたいと思っています。
メンズファッションを軸に、多様なカルチャーへと世界を広げる。
━バイイングとYouTubeのお仕事の比率について教えてください。
バイイングや別注商品企画などのモノづくりは続けつつ、できるかぎり垣根をつくらずに、本当に面白い洋服を追求したいという想いがあります。そういう意味ではバイヤーであって、バイヤーではない“メンズファッションの新しい提案をしていく発信者”としてのキャリアがスタートしたように思います。比率はその時々で変わるでしょうが、あくまでもバイヤーとしての武器の一つがYouTubeですし、発信者としてのキャラクターの一つがメンズファッションバイヤーでもある。たとえば新しくはじめたYouTubeチャンネル『Tiamo La…』では、MCの広瀬未花さんが得意な美容などこれまで取り上げてこなかったカルチャーにも幅を広げたり、ファッション業界以外の方とも積極的にコラボレーションしたいと考えています。そして、その先で出会える方たちと商品企画をしたり、一緒にお仕事をしていきたいと思っているところなんです。メンズファッションバイヤーとして、これまで培ってきた感覚は大事にしていきたいですし、様々な化学反応が見れそうで楽しみです。
気持ちを高揚させてくれる“空気感”を掴む。
━モノを選ぶ際に、大切にされている基準はありますか?
バイヤー業をやっていますので、モノ選びの際に「長く愛用できる」「モノづくりの背景がしっかりしている」というのは大前提にあります。ただ、歴史や素材、製法のような要素はあくまで情報だと思うんです。それを知っておくのは当然として、「欲しくなる」ためにはテンションを上げてくれる別のものが必要です。たとえば、お店での接客を振り返ってみても、最後の一押しって力技みたいなところがあるじゃないですか? 調べたら収集できるような情報ではなく、「めっちゃ良くないですか?」と、最後に背中を押してくれるもの。それはトレンドだったり、店員のコミュニケーションだったり、お店の雰囲気だったり、論理的には測れない部分だと思うんですよね。同じモノでも、数年前と今では気分が高揚するポイントは違うじゃないですか。そういった空気感を掴むのがバイヤーの仕事だと思いますし、自分がモノを購入する際にもそういった気持ちを大切にしています。たとえば、本日身につけている70〜80年代の〈エルメス〉のヴィンテージリング。2点ともヨーロッパへ行った際に出会い、かれこれ10年以上愛用しています。当時も心を奪われたのですが、今改めて見ても新鮮なデザインに感じます。自分自身に箔をつけてくれる大切なアイテムです。
積み上げてきた歴史と伝統が、デザインの可能性を広げてくれる。
━英国製品の魅力は何だと思われますか?
モノには「気持ちを高揚させてくれるかどうか」が大切だと言いましたが、その背景に普遍的なモノづくりのこだわりがあるからこそ、時代を超えて愛用できると思っています。そういった意味で、英国製品にはとくに安心感があります。国柄的な勤勉さもそうですし、積み上げてきた歴史とモノづくりの伝統においては勝る国がないですよね。ナノ・ユニバースのバイヤー時代に、毎シーズン〈バブアー〉の別注企画を担当しており、本国のファクトリーまで行って取材をしたことがあります。職人のモノづくりの現場や、全世界から届いた修理品が陳列されているのを見て、とても感動しました。世界から選ばれている理由がわかったような気がしましたね。その上で別注企画では、グレンチェック柄やハウンドトゥース柄のウール生地、ホームスパンなど、あえて定番のオイルドコットンではない素材で、日本のライフスタイルに合うようにアップデートしました。このデニム生地のビデイルは何年も前の別注品ですが、今でも古く見えず現役で活躍してくれています。モノづくりがしっかりしているからこそ、デザインをアレンジしても長く愛用できるというのは、英国製品の魅力なのではないでしょうか。
モノづくりの軸はぶらさずに、時代に合わせて進化するブランド。
━グレンロイヤルの印象について教えてください。
ナノ・ユニバースに入社したての頃に、先輩から「革製品のいいモノは、ブランドを知っておいた方がいい」と教わりました。その際に定番ブランドのひとつとして知ったのが、グレンロイヤルでした。当時から普遍的なモノづくりを大切にしながら、時代に合わせて機能性をアップデートしているブランドだという印象を持っていて、このリングベルトを購入しました。実は本当に気に入ったモノは、経年変化が出ているものと、新品のもの2つ買い、スタイリングに合わせて使い分ける性分で、このベルトも2本目(笑)。革の光沢感やバックルに存在感があるのでとても重宝しています。しなやかなので使い込んでも上品さを損なわずに、経年変化を楽しむことができます。こういう細かな部分へのモノづくりがしっかりしているのは素晴らしいですよね。
使い方を自由にアレンジできる、機能的な財布。
━愛用されているオーガナイザーウォレットの魅力を教えてください。
ちょうどこういった形の財布を探していた時に、ブリティッシュメイド 青山本店で運命的な出会いを果たし、心を掴まれて購入しました。はじめは財布でありながらパスポートを収納することもできるので、海外出張へ行く時にも活躍してくれるだろうという期待がありました。ただ結果的には、便利過ぎて普段からメイン財布として愛用しています(笑)。お金やカードはもちろん、フリーランスになってから保管が必要になった領収書もたくさん収納できます。またマチがしっかり取ってあるので、僕はスマートフォンまで中に入れて持ち運んでいます。凹凸のあるレイクランドブライドルレザーの質感が心地よく、2年ほどヘビーユースしていますが、年々手なじみが良くなっているような感覚があります。経年変化を楽しむのであれば、明るい茶系のカラーも良いなとは思いましたが、好きなブラックを選びました。革の硬い質感が好きなので、クリームなどはそこまでマメに塗布せず、上品さをキープしながら末長く愛用していきたいと思っています。
photoKenichiro Higa textK-suke Matsuda(RECKLESS)
ファッションディレクター/メンズバイヤー
福島“ティアモ”雄介さん
1986年生まれ。東京都出身。愛称は、“ティアモ”。大学卒業後、高校の国語教師の傍ら、アパレル会社で勤務。2009年にナノ・ユニバースへ入社。ウィメンズの販売、MDを経て2017年よりメンズドレスバイヤーに就任。YouTube番組『Tiamo La moda』の司会進行も担当する。2021年3月にフリーランスとして独立。現在は、大手百貨店やセレクトショップなどのバイイング、別注の商品企画などで活躍中。また、後続の番組『Tiamo La…』や、フォロワー数4.7万人超のインスタグラムを通じて、ファッションやライフスタイルについて発信している。
photoKenichiro Higa textK-suke Matsuda(RECKLESS)