GLENROYAL of Scotland

No.37

一流品の探求者が認めた
ブライドルレザーのサッチェルバッグ

ジャーナリスト長谷川 喜美さん

伝統製法を守るだけではなく、モノ自体の魅力を磨き続けること。
グレンロイヤルには、私の思うクラフトマンシップがあります。

世界各国にあるモノづくりの現場を訪ね、文化的な一流品を取材しているジャーナリストの長谷川喜美さん。グレンロイヤルのファクトリーがあるスコットランドをはじめ、英国文化に造詣が深く、『サヴィル・ロウ』『ハリスツイードとアランセーター』『ビスポーク・スタイル』『英国王室御用達』などの本を上梓。また、雑誌やウェブメディア、航空会社の機内誌までさまざまな媒体に寄稿し、近年では自身のオンラインサロンでも筆を振るっています。そんな長谷川さんが愛用されているのは、グレンロイヤルのサッチェルバッグとブックカバー。今回、お仕事の話を交えながら、英国製品やグレンロイヤルの魅力についてお話をしていただきました。

文化的なモノを探究し、背景ごと伝える仕事。

━ジャーナリストとしての活動について教えてください。

ファッションに限らず、フランス料理やお酒、自動車など、クラフトマンシップを感じられる“文化的なモノ”が好きで、一度調べ始めたら際限がないです。私はそれらを取材して記事を書くことを主体に活動していますが、サヴィル・ロウひとつを例に挙げても、時代背景や歴史を知ることで、より深い部分が理解できると考えています。その上でインタビューをすれば、「なぜその言葉が出てきたのか」ということが分かりますし、モノの背景ごと読者に伝えることができます。男性誌や女性誌、航空会社の機内誌など、さまざまなメディアで執筆していますが、どこまでも深く調べてしまい、なかなか書き始められないこともしばしばあります(笑)。


オンラインで海外の文献にも簡単にアクセスできますからね。私自身は一記事5,000字くらいの読み応えのあるものが好きなのですが、紙の媒体では性質上どうしても文字数に制限があります。何十ページという大特集を任せていただけることもありますが、自分が本当に伝えたいというものを発表する場を少しずつ作りたいと思い、オンラインサロンを立ち上げました。そういった執筆業に加えて、書籍の出版、動画やイベントの出演、生地会社のブランディング&マーケティングなど、さまざまなお仕事にも取り組んでいます。


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本づくりの意義を、改めて感じさせてくれた恩人。

━とくに思い入れの強い仕事はありますか?

個人的には紙のメディアが好きです。たとえば雑誌の記事ひとつにしても、たくさんのスタッフのフィルターを通すことでクオリティの高いものに仕上がりますし、原稿も校閲していただけるのでより深く精査できます。その一方で、中でも本を執筆することはかなりの時間とお金がかかる大変な仕事ではあるので、一時は「本をつくることに意味はあるのか」と思い悩むこともありました。本を作る意義が明確に見出せるようになったきっかけが、2013年に出版した『ハリスツイードとアランセーター』という本です。もともとはANA社の機内誌で、22Pにわたるハリスツイードの特集を担当したところ大きな反響があり、その後アランセーターについて32Pの特集をつくることになりました。それらを再編集したのがこの本です。アランセーターの時は、記事をつくるためにアイルランドへ二週間滞在し、徹底的に取材しました。200枚以上のアーカイブセーターを保管している国立博物館を口説いて撮影し、10人以上の編み手を取材するという本当に大変なロケで……。その編み手の中の一人に、ローマ法王にもセーターを献上したという伝説の編み手、モーリンさんがいました。取材した方の中で群を抜いて技術が高く、ご高齢で体調が良ければというお話でしたのでお会いできたのが本当に幸運でした。モーリンさんは残念ながら昨年に亡くなったのですが、ご家族の方からは「彼女の姿を本に残してもらえて良かった」と言っていただきました。また、お孫さんからもSNSを通じて「ありがとう」と連絡をいただき、「真面目に本を作ることに意味はある」と深く感動したんです。


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愛用歴を経て、自分の一部になるモノ。

━モノを選ぶ時に大切にしている基準はありますか?

自分の思う“美しさ”があること。昔ながらの伝統製法でつくられているからとか、どこの国でつくられている製品だから、という価値観もあるのですが、そういったことを凌駕する自分自身の「良いモノは良い」という絶対的な軸があるように思います。だからこそ、生産国や背景だけに縛られず、琴線に触れるモノを購入することが多いかもしれません。また、デザインの美しさはもちろんですが、機能的であることも重要なポイントです。使う人のことを考えて作られているモノは、自ずとそれ自体の魅力やクオリティが高くなりますし、簡単にはつくれないですよね。そして、私は購入前に悩むタイプなので、その分一度気に入ると大切に長く使う傾向がありますし、愛用しているうちに自分の一部になるような感覚が好きです。たとえば、このカルティエの「マストタンク」はもう30年以上愛用しています。昔からスタイルは変わらず、時代を経ても持つことができるクラシックなモノをたくさん愛用してきましたので、気がつけば身の回りがヴィンテージだらけになっていました(笑)。


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長く使うことが前提にある、英国のモノづくり。

━英国だけではなくイタリアにも精通している長谷川さんですが、それぞれの国のモノづくりに考え方の違いはありますか?

イタリアの製品の方が、よりトレンド感を意識しているような気がします。たとえば、カラー展開にしても、とにかくバラエティが欲しいと思っているメーカーさんが多いですし、耐久性よりもどちらかと言えばデザインを重視する傾向はあるかもしれません。一方で、英国の製品は長く使うということに重きを置いているモノが多い印象があります。そもそも英国人の持っている価値観として、真新しいものは“成金っぽい”という感覚があるように感じます。たとえば、私の知人のウェルドレッサーの方々には、革靴をピカピカに磨いて履いたり、シャイニーなクロコダイルレザーのような製品を身につける方はほとんどいません。真新しいモノよりも、使い込んで自分になじんだモノの方が素敵だという価値観だからこそ、ずっと変わらずにモノづくりを続けているメーカーが多いのではないでしょうか。だからこそ、修理の対応がしっかりしていますし、同じ製品が欲しいと思った時にはまたそれを買うことができます。そういったところは英国製品らしいモノづくりの特長だと思います。


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ブライドルレザーの特質を活かしたプロダクト。

━愛用されているサッチェルバッグの魅力を教えてください。

私がグレンロイヤルを初めて知ったのは、2015年頃に日本航空の機内誌の仕事をした時のこと。その際にエイジングした財布をお借りして、ブライドルレザーに興味を持ちました。それから、カジュアルな格好の時に合わせるバッグが欲しいと思い、このサッチェルバッグを購入しました。ショルダーストラップを中にしまって使うこともできますし、オフィスカジュアル的なスタイルから、本日着てきたツイードのシューティングケープのように英国の洋服とも相性が良く、とても気に入っています。個人的に形が崩れているバッグが好きではないのですが、三年愛用してもくたびれず、美しい状態を保っています。


持っていると褒められることも多いのですが、なにより皆さんが驚かれるのはこの軽さ。ブライドルレザーは硬くしなやかな革質なので、薄くてもプロダクトを成型できます。タフなレザーでないと、強度と厚みを出すために革を二枚貼り合わせて作らなければいけないので、必然的に重くなってしまいます。その上で、見た目では想像できないほど収納力にすぐれていることに感動しました。私はどこへでも11インチのMacBook Airを持ち歩いているのですが、このバッグは箱型でスペースを贅沢に使えるので、財布や手帳などの身の回りのものからハードカバーの大きな判型の本まで、合わせてきれいに収納することができます。海外出張や旅行の際に、機内へ持ち込むバッグとしても重宝しています。


昔ながらの製法を、守り続けるだけではない。

━長谷川さんにとってクラフトマンシップを感じるプロダクトとはどのようなものですか?

一口にクラフトマンシップといっても、いろいろな考え方があります。たとえば、必ずしも手でモノづくりを完結することがすべてではないですし、時代背景やバックグラウンドによってファクトリーのスタイルは異なります。そういう意味では、ただ昔ながらの製法を守り続けているから良いのではなくて、現代の生活の中でどういう風に使われているかをよく考え、その上で「どういうモノをつくりたい」という意志があることがモノづくりの本質なのではないでしょうか。そういったプロダクトはモノ自体の魅力が磨かれていくので、デザインの美しさはもちろん、品質や機能性の向上にも余念がありません。たとえば、このグレンロイヤルのブックカバーはもともとA6の文庫本用として作られているものですが、縦が少しだけ長く設計されていて使い勝手が良いです。私は無印良品のダイアリーノートを合わせて手帳として使用していますが、文庫本サイズのリフィルはたくさん出されているので好きなものを組み合わせて使えるのは魅力ですよね。三年くらい愛用しているのですが、モノとしてのクオリティが高いからこそ、だんだん自分の手になじんできた感覚があります。伝統的な製法や素材を活かし、今の世の中に必要とされるプロダクトをつくり続けている。グレンロイヤルは、まさに私の思うクラフトマンシップを体現しているブランドだと思います。


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ジャーナリスト 長谷川 喜美さん

photoMasahiro Sano textK-suke Matsuda(RECKLESS)

ジャーナリスト
長谷川 喜美さん

ジャーナリスト 長谷川 喜美さん

イギリス、イタリアを中心に、ヨーロッパの魅力を文化の視点から紹介するジャーナリスト。国内外のラグジュアリー誌を中心に、メンズスタイル、車、ウィスキーなどに関する記事を執筆。海外取材制作、原稿執筆企画、イベント出演、高級消費財ブランディング& マーケティングにも従事。オンラインサロン『MEN’S STYLE LABO』を主宰。著書に『サヴィル・ロウ』『ハリスツイードとアランセーター』『ビスポーク・スタイル』『英国王室御用達』など。最新刊『サルトリア・イタリアーナ』は、日本語、英語、イタリア語の世界3カ国語で出版される。趣味は料理と写真。愛機はライカ社を取材した際に購入した「Q2」。インスタグラム(ID:yshasegawa)のフォロワー数は1万人を超える。

photoMasahiro Sano textK-suke Matsuda(RECKLESS)